りぼんの読書ノート

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イクサガミ 天(今村翔吾)

2022年1月に『塞王の楯』で直木賞を受賞した今村翔吾さんは、現在もっとも波に乗っている時代小説の書き手のひとりでしょう。そんな著者が書き下ろした「時代劇デスゲーム」ですから、おもしろくないわけはありません。もっとも本書は3部作の第1部であり、第2部はまだ刊行されていません。シリーズが完結してから一気読みすべきでした。

 

時代は西南戦争の翌年である明治12年5月4日。大金を得る機会を与えるとの怪文書によって、京都の天龍寺に集められた猛者たちに提案されたのは、命を懸けた「遊び」でした。参加者たちを闘わせながら東京に向かわせ、生き残った者だけが最後の試練に挑戦する機会を与えられるというのです。コレラに伏した妻子の治療費を稼ぐために参加した剣客・嵯峨愁二郎は、コンビを組んだ12歳の少女・双葉とともに生き延びることができるのでしょうか。そして最後の1名になるためには、双葉とも戦わなくてはならないのでしょうか。しかも謎めいた剣術・京八流の継承者候補として育てられた愁二郎を敵として付け狙う、かつての義兄弟たちもゲームに参加しているのです。

 

このゲームはどうやら明治政府が、蜂起や暗殺を封じるために仕組んだもののようですが、大久保利通は温厚派の様子。では誰が黒幕なのでしょうか。この直後に起こる大久保利通暗殺事件との関係もあるようです。

 

熱田神宮のある宮宿を出たところで、はじめは300人近くいた参加者は84人にまで減っています。次巻を読めるのがいつになるのかわからないので、備忘録として主なライバルたちについてメモしておきましょう。

・香月双葉:天道流短剣術の指南役を父に持つ丹波出身の12歳の少女。実力不足だが?

・柘植響陣:愁二郎と同盟を結んだ元伊賀同心隠密

・貫地谷無骨:長州藩人斬りであった、死闘を楽しむ無法者

・菊臣右京:花山院家に代々伝わってきた秘伝太刀の指南役、無骨に斬られる

・カムイコチャ:「神の子」と称す弓の名手であるアイヌ

祇園三助、化野四蔵、衣笠彩八、甚六:京八流の継承者候補として愁二郎をともに育てられた義兄弟

・氏名不詳の老人:飄々とした底の見えない老人。京八流の見届人・幻刀斎か?

・槐:ゲームの仕掛け人側の剣豪。橡、欅、檜、柊らを率いる

 

2023/4