りぼんの読書ノート

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図書館司書と不死の猫(リン・トラス)

愛妻を亡くしたてケンブリッジの図書館を定年退職したばかりのアレックのもとへ、ウィンタートン博士なる謎の人物から一通の奇妙なメールが届きます。添付されていたフォルダには、突然失踪した姉をさがす男ウィギーの手記と、姉に飼われていた猫ロジャーに関する信じがたい情報がおさめられていました。なんとその猫ロジャーは人間の言葉を話すのみならず、8回もの死を経た後に不死の身となったというのです。さらには殺人の情報も・・。

 

退屈していたアレックは面白半分で手記の内容を調べ始めますが、やがて彼自信も一連の事件に巻き込まれてしまいます。しかも不死の猫は妻の突然死にも関係があったようなのです。やがて事態を一番理解していたウィンタートン博士が死亡したとの知らせが届き、アレック自身にも生命の危機が迫ってくるのでした。

 

まるでコメディのようなタイトルと表紙ですが、立派なホラー小説です。とはいえ、愛猫家として知られたアイザック・ニュートン卿にまつわる伝説や、ホームズの相棒ワトソンと名付けられた飼い犬の登場や、不死猫ロジャーの声が007俳優のダニエル・クレイグそっくりだとか、ユーモア感覚あふれる設定や引用が随所に登場。『フランケンシュタイン』や『ねじの回転』や『夜明けのヴァンパイア』などのゴシックホラー小説へのオマージュも詰め込まれています。ブラックユーモア寄りのホラーといったところでしょうか。

 

著者の文学と猫への愛情がぎっしり詰まった作品でした。もっとも解説によると、「20年に渡って猫を飼い続けてきた著者が、本書を書き上げた後で犬派に転向した」とのことです。

 

2023/3