りぼんの読書ノート

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すごすぎる将棋の世界(高橋茂雄)

著者は芸人のサバンナ高橋さん。今年の4月からNHKの将棋番組の司会を務めている高橋さんは、藤井総太ブームに乗って2020年から将棋の世界に関心を持ったばかりの初心者です。将棋の実力は級位者にすぎず、相棒の山口恵理子女流2段のサポートに助けられている高橋さんですが、「観る将」としては既に超一流。棋士たちの凄さを知ったことで、将棋沼にどっぷりと嵌まってしまったのです。本書は、そんな高橋さんが書いた「観る将」たちへの手引書です。

 

170人ほどいる棋士全員を紹介したい気持ちを抑えつつ、43人だけを厳選して紹介した「僕が注目している棋士の先生たち」。無数にあるドラマチックな対戦から8つだけを厳選して紹介した「歴代の戦いがすごい」。そして近年の「観る将」の強い味方となっているAIの発展史や、高橋流の将棋の楽しみ方を綴った最後には、なんと渡辺明名人との対談までついています。緊張感も伝わってきますが、名人から「聞き手力」を褒められるレベルなのは素晴らしい。

 

一番興味深かったのは、知らなかったことも多い「歴代の戦い」ですね。2年越しで7冠を賭けて戦われた「谷川vs羽生」。初代永世竜王が賭えられた「渡辺vs羽生」。指されなかった妙手が新手賞を受賞した経緯を語った「真部vs豊島」。涙の最年長初タイトルが話題になった「木村一基vs豊島」。対局拒否の陣屋事件「木村vs升田」。時空を超えた天才棋士対局「加藤vs藤井」。奇跡のプロ入りを賭けた「瀬川vs高野」。そして対局をナマで見せるコンテンツとして確立させたABEMAトーナメント。その一局に至るまでのストーリーを知ることで、「観る将」の楽しみは倍増するのですね。

 

「観る将」初心者向けに書かれた本ですが、何より将棋の魅力をひとりでも多くの人に伝えたいという、高橋さんの熱意が伝わってきます。

 

2022/12