りぼんの読書ノート

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観る将のための将棋ガイド(山口絵美菜)

今年の3月30日に突然、「新たな夢ができた」として日本将棋連盟を退会した京都大学卒の元女流棋士が、昨年秋に出版していた将棋ガイドです。タイトルにある「観る将」とは、藤井聡太5冠の活躍によって最近増えた「自分ではほとんど将棋を指すことなく、プロ棋士などの対局の観戦を楽しむ将棋ファン」のことです。もちろん「観る将」にとっても、将棋のルールや将棋界の仕組みや棋士女流棋士について知っておいたほうが楽しみが広がる訳であり、本書はそのための入門書です。

 

同様の本としては、香川愛生女流4段による『職業、女流棋士』も出ていますが、こちらのほうがより初心者向け。『職業、女流棋士』には「香川愛生というひとりの女性が将棋と共に歩んできた半生を鮮やかに描いた作品」という側面もあったのですが、こちらの著者は自身についてあまり語ってくれませんでした。宮崎県出身の著者が将棋と出会って女流棋士を志して実現するまでの過程が、数ページのコラムに淡々と纏められているだけだったのが少々残念。もっとも「将棋ガイド」ということに徹底した本書とは、出版の趣旨が異なっているので、仕方ないのでしょう。

 

「将棋ガイド」ということでは、徹底して初心者向けに書かれていますので、将棋知識ゼロの方でもひととおり理解できるかと思います。少しはわかっている私には、かなり物足りない内容でしたが、仕方ありませんね。「新たな夢」に向かって歩み始めた著者は現在は一般人であり、その後の情報が公開されていないのですが、まだ27歳の才媛ですし、必ずや新たな道で成功されると信じています。

 

2022/7