りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

とうもろこし倉の幽霊(R・A・ラファティ)

1914年にアイオワで生まれ、電気技師を経て1959年に44歳で作家デビューした著者の短編集。「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」からの出版ですが、奇想とユーモアの入り混じった作品はどれも、SFというジャンルには収まり切れていません。

 

「とうもろこし倉の幽霊」

田舎町で起こった幽霊騒動は、結局のところ重層的なホラ話にすぎなかったのでしょうか。地元の少年と都会の少年の肝試しのような冒険では何も起こらなかったのでしょうか。真相は老犬シェップだけが知っているようです。

 

「下に隠れたあの人」

平凡な魔術師であった小男が、唯一無二の「人消し」の技をふるう大魔術師ザンベジとなれたのには、どうのような事情があったのでしょう。妻で相棒のヴェロニカには感謝しきれませんね。

 

「サンペナタス断層崖の縁で」

奇跡的な進化の事例が発掘された現場で、また新たな進化が起ころうとしています。人類は鳥となって大空へ舞い上がっていくのでしょうか。しかし科学者たちの夢想は、地元の平凡な男によって破られます。彼は「カモ女」などを妻に娶りたくなかったのですね。

 

「さあ、恐れなく炎の中へ歩み入ろう」

「居住世界シリーズ」と呼ばれる連作短編のひとつだそうです。既に人類が死に絶えた地球には「奇妙な魚」と呼ばれる亜人類が登場していました。彼らは滅びへ導こうとする圧倒的な力に打ち勝てるのでしょうか。歴史と寓話が出会ったような作品です。

 

「王様の靴ひも」

テーブルの下の小人の世界が見える主人公は、その力を利用して「大きな世界」も見ることができるのでしょうか。彼の力を利用しようとする団体はファシスト集団のようなのですが。

 

「千と万の泉との情事」

人の手がいっさい加わっていない「究極の泉」を求めてさまよう男と、世界を混沌から救う人工的なしるしを探し求める男。2人は彼らを翻弄する狂気をたたえた泉の精と出会うのですが・・。

 

「チョスキー・ボトム騒動」

荒野の川窪に生息するといわれるUMAは人間なのか、別種の生き物なのか。ある日彼らのひとりが地元の高校に入学してフットボールチームに入り、人間離れしたパワーのせいで大活躍。しかし大スターになった彼に対する敵意も生まれてしまうのでした。

 

「鳥使い」

先住民族の伝承にある超自然的な力を持つ「鳥使い」とは、使命を果たしたら首に縄をかけられ、木につるされて燃やされる、藁で作った案山子にすぎないのでしょうか。それとも・・。

 

「いばら姫の物語」

千年も時を止めたいばら姫の眠りとは何だったのでしょう。彼女が眠りについた時に、世界は一度滅亡したのではないでしょうか。世界の終焉と救済の真実は、おとぎ話の中に潜んでいるようです。

 

2022/9