りぼんの読書ノート

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七年の夜(チョン・ユジョン)

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書肆侃侃房による「韓国女性文学シリーズ」の第3弾である本書は、550ページを超える長編ミステリです。やはり長編である『第九の波(チェ・ウンミ)』の時にも感じたのですが、不自然な展開が多く感じるのは韓流ドラマ的ということなのでしょうか。それとも韓国の司法制度やマスコミのあり方に問題があるのでしょうか。

 

セリョン村の横暴な地主とその娘、さらに自分の妻を殺害した罪で死刑を宣告された男ヒョンスは、世間で言われた通りの「狂気の殺人犯」なのでしょうか。悲劇の晩には、いったい何が出来事が起こっていたのでしょうか。容疑者となったヒョンスは口をつぐみ通し、当時11歳だったヒョンスの息子ソウォンの記憶は定かではありません。しかしかつての父親の部下であり、ソウォンを引き取って育てたスンファンは、事件の真相を突き止めようとしていたのです。そして7年後にヒョンスの死刑が執行されると、ソウォンのもとに魔の手が伸びてくるのですが・・。

 

「息も切らせぬ執拗な心理劇と容赦ない暴力の応酬」とありますが、湖で溺死した娘以外には死体も見つからず、娘の殺害ですら状況証拠しかないのに、複数殺人者として死刑が確定してしまうものなのでしょうか。しかもスンファンが導き出した結論を刑事まで信じるのなら、なぜ再審請求もなく、死刑が執行されてしまうのでしょうか。そのあたりが気になってしまい、物語がなかなか入ってきませんでした。いや地主ヨンジェの横暴さと、容疑者ヒョンスのダメ男ぶりは、はじめから明らかだったのですけれど。もう一点、せっかくスンファンもソウォンもダイバーなので、どうせなら湖の中で決着をつけて欲しかった・・。

 

2022/3