りぼんの読書ノート

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ファットガールをめぐる13の物語(モナ・アワド)

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主人公は、自分が太っていることに悩んでいるエリザベス。彼女がハイティーンの頃に始まる13個の短編は、彼女が自分の身体の大きさについて抱えているコンプレックスとともに進んでいきます。冒頭で彼女が、やはり太っている親友メルに言い放つ「宇宙はわたしたちに冷たい。理由はわかっている」との言葉が、本書のテーマを象徴しているのです。

 

エリザベスは、母親、親友、何人かのボーイフレンド、ショップやジムやネイルサロンで出会う人々、そして夫となるトムに対する時ですら、常に身体のサイズを意識せざるをえません。やがて母親が持病を悪化させて亡くなった後で、彼女は一念発起してダイエットに取り組みます。物語の後半に近づくに連れて、彼女は次第に細くなっていき、ついに普通サイズの身体を手に入れることに成功。しかし細くなったエリザベスは、シナリオ通りの幸せな生活を手に入れることができたのでしょうか。

 

常に「ボディー・イメージ」を意識させられる現代社会においては、それが人間関係のあり方に影響を及ぼす要因であることを否定できません。とりわけ太っていることが、社会的・経済的な格差と結び付けられて論じられることも多いアメリカにおいては、その傾向は著しいのでしょう。もちろん「細さ」と「幸せ」には必然的な因果関係などないのですが、そんな当たり前のことをテーマとする小説が必要とされる社会に、私たちは生きているということですね。コミカルな作品ですが、人が自分の身体に抱くコンプレックスを聞くことは、居心地の悪いものです。

 

2022/3