りぼんの読書ノート

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もらい泣き(冲方丁)

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著者が2009年6月から2012年2月まで「小説すばる」に連載したコラムは、「泣き」をテーマとしたショ-トストーリー集でした。はじめは「怒り」のほうに意識が向いていたとのことですが、直前に考えを変えたとのこと。「怒り」を持続させたり、他人の共感を得たりするためには、本来複雑であるはずのものごとを単純化する必要があるというのです。その一方で「泣ける話」というものは、人が己の感情と和解するまでの過程と結果であることが多く、「共感」や「普遍」という概念に結びつきやすいというのです。なるほど。

 

多くの方々から聞き集めたエピソードを元にした33編の物語の中でもっとも多かったテーマは、「家族」「信頼」「恋愛」であり、次いで「病気・怪我」「動物」「死別」だとのこと。著者は「大勢から話を聞いて書いたにもかかわらず、あたかもたった一人から、長い長い話を聞き続けたような不思議な感覚」があると語っています。そしてその一人こそ「誰の心にも共通して存在する良心なのかもしれない」というのです。連載中に東日本大震災が起こりましたが、このコラムの執筆が心を鎮めさせてくれたという思いも綴られています。

 

内容までは紹介しきれないので、タイトルだけでも記録しておきましょう。あとで内容を思い出す手がかりになるかもしれませんので。

 

・金庫と花丸 ・心霊写真 ・ぬいぐるみ ・ラッキーナンバー ・ハンバーグとパンプス ・女王猫 ・メニューとオペラ歌手 ・運転免許とTシャツ ・メガホン男 ・地球と私 ・爆弾発言

 

・ミスター・サイボーグのコントローラー ・旅人たちのバス ・指導者は花嫁 ・主治医とスイッチ ・音楽と十円ハゲ ・鬼と穴あきジーンズ ・教師とTシャツ ・仁義の人 ・携帯電話とエゾシカ ・化粧をする人

 

・二十五メートル ・心臓の音 ・2011年3月11日について ・ノブレス・オブリージェ ・インドと豆腐 ・盟友トルコ ・空へ ・地球生まれのあなたへ ・国境を超える眉毛 ・先にいきます ・タクシーと指輪 ・ドッグハウス・カー

 

2021/11