りぼんの読書ノート

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あきない世傳 金と銀8 瀑布篇(高田郁)

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武家の家紋のみに用いられてきた小紋染を町人向けのものとしたいという幸の願いは、江戸っ子たちの支持を得ることができたようです。江戸の五鈴屋は順調に立ち上がりましたが、こういうアイデアはすぐにまねされてしまうもの。でも先行者利益を得るために高値で売り出したり、独占するための障壁を考えるなどして、商売のスタンスを変えてはいけません。

 

商売の裾野が広がることは、これが一時の流行ではないということ。蝙蝠紋や文字柄などの新しいデザインや商品やターゲットを考えることはもちろん、商品の製造流通過程の中で、重要な工程なのに利益をあげていない型掘師を優遇してグループの結束を図るなどは、現代でも通用しそうな手段です。

 

しかしやはり「禍福は糾える縄の如し」なのです。麻疹の流行による大不況期はなんとか乗り切ったものの、幕府から莫大な御用金を求められたり、やっと一緒に暮らせることになった妹の結にとんでもない縁談が飛び込んできたりという苦境を、幸たちはどう乗り超えていくのでしょう。思いを寄せていた手代の賢輔と結ばれることは当分ないと知った結の心は揺れ動きます。足掛け3年と限りを定められた女当主となった幸の後を継ぐ者はようやく決めることができましたが、結の問題は後々波紋を呼びそうです。ますます佳境に入っていくシリーズの続編も楽しみです。人気なのでなかなか順番が回ってこないのですが。

 

2021/4