りぼんの読書ノート

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猫君(畠中恵)

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しゃばけシリーズ」の著者が、新たな可愛らしいキャラクターを生み出してくれました。それは猫又。20年生きたネコは尻尾の先が二叉に分れた妖怪となり、人語を解し、人に化け、飼い主に祟るようになると言われていますが、本書の猫又たちは飼い主への感謝を忘れず、人間たちと共存しているのです。しかも本書の主人公たちは、猫又としては新米の1年生であり、一人前の猫又となるための学校である猫宿に通い始めたばかりなので、まるで子ネコのように可愛いのです。

 

江戸にある6つの猫又の陣地は、何かあるたびに勢力争いをしているとのこと。しかし猫宿だけは中立地であり、各陣で生まれた新米猫又たちがともに学ぶ場所。なんだかホグワーツのようですが、この猫宿はなんと江戸城内にあり、しかも戦国時代に魔王と呼ばれた武将が実は猫又であり、ずっと生き延びて猫宿の長となっているどころか、人間界の主人である代々の徳川将軍にも助言をしているとのこと。この人物ならば猫又の6陣にも抑えが効くはずです。

 

ハリー・ポッター」でも「鬼滅の刃」でもそうですが、この種のファンタジーの魅力は妖術そのものではなく、仲間が協力しあって難題に挑んでいくところにあるのでしょう。本書においても、祭陣出身で茶トラのみかんが、武陣の黒猫・黒若や、花陣の白猫・白花や、姫陣の灰色猫・鞠姫らと協力しあって、対立しあう6陣の先輩猫たちに立ち向かう中で仲間意識を高めていく過程が、読者の共感を呼ぶのです。はたして100年前に猫又たちを危機に陥れた「生類憐みの令」は復活してしまうのか、猫又たちの伝説の英雄「猫君」が再来するという噂は本当なのか。ちょっと「ハリー・ポッター」的なところはあるのですが、猫又たちの可愛さで許せてしまいます。

 

2021/1