りぼんの読書ノート

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うさぎ通り丸亀不動産(堀川アサコ)

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うさぎ通り商店街の老舗「丸亀不動産」のただ1人の社員である美波は、「視えるひと」でした。「鬼平」と呼ばれる女社長の二瓶が、可愛らしい容姿をしているものの全く仕事ができない美波を雇っている理由はただひとつ。幽霊が出るという事故物件に送り込んで原因究明をさせることだったのです。

 

娘に大切なことを伝えるために現れた両親と弟。妻への謝罪を言うことなく亡くなった高齢の男性。結婚式ソングがかかる部屋で死んだ男性。気が弱いうえに除霊能力もない美波には「視ること」以外は何もできないのですが、彼女の優しい気持ちが問題を解決に向かわせるようです。幽霊も人間も、こういう女性には力になってあげたくなってしまうのでしょうか。

 

唯一の趣味が刺繍でありながら無類のヘタクソで、しかしそのヘタクソぶりがかえってSNSで話題になっているという美波のキャラがいいですね。しかもオニヘイ社長の過去の恋人であった男性が経営するライバル不動産会社のイケメン社員が、ネットで「刺繍王子」と噂される人物ではないかという問題も残されています。しかも彼は美波に好感を抱いているようなのですが、このあたりの問題は未解決のまま。ということは続編もありそうです。著者の代表作である「幻想シリーズ」ほど完成度は高くはないのですが。

 

2020/10