りぼんの読書ノート

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南仏プロヴァンスの25年(ピーター・メイル)

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著者の『南仏プロヴァンスの12か月』を読んだのは2012年のこと。この年にプロヴァンス旅行に出かけたので、その前に読んでみたのです。著者が住んでいたメネルブこそ行きませんでしたが、リル・シュル・ラ・ソルグからリュベロン高原に入リ、ゴルド、ルシヨン経由でボニューで農家を改造したホテルに宿泊。翌日はルールマラン経由でエクサン・プロヴァンスへと抜ける工程でした。『12か月』が書かれたのは1989年のことですが、20年以上たっていても作品で受けた印象と同じ雰囲気を強く感じたものです。 

 

本書は、2018年に亡くなるまで愛するプロヴァンスに住み続けた著者が、折々綴っていたエッセイをまとめた作品です。移住当時のとまどいや解放感に始まり、次第にプロヴァンスの土地や人々に馴染みながら、南仏での四季折々の生活を楽しんできた様子が率直に綴られています。 

 

「あの頃と今」と題された最終章では、せわしない観光客の増加や物価の値上がりをこぼしつつも、25年たっても変わらない事柄を列挙されています。それはパスティスの味わい、ゆっくり流れるプロヴァンス時間、ブール(ペタンク)の楽しみ、市場で買う食品のおいしさ、そして長い時間をかける昼食だとのこと。私が訪れた2012年にもそれはあったはずですが、せわしない旅行者としては市場のにぎわいくらいしか体験できませんでした。もっとゆっくり旅行しなくては醍醐味を味わえませんね。 

 

本書には、ジェニー奥様がプロヴァンスの日常生活を切り取った写真が、16点紹介されています。ここにある広大な風景は、確かに味わうことができました。ボニューの宿のテラスから夕日に照らされたバントゥ山を眺めつつ、公共キッチンで焼いたお肉とワインを楽しんだのです。 

 

2020/8