りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

沙中の回廊 下(宮城谷昌光)

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没落寸前の家に生まれた士会を見出した文公は天命を有していましたし、文公を補佐した狐偃や先軫は優れた人物でしたが、文公の死後に晋の勢いは陰ります。後継の襄公は早世し、宰相となっていた趙盾が礼を怠るのです。襄公の死後、秦にいた公子雍を次の晋君として迎えるための使いとなった士会が戻る前に、趙盾が変心してしまうのです。 

 

さらに公子雍の一行を攻撃するという暴挙に出たため、「礼をおこたった晋は欺瞞の国になる」と苦悩した士会は秦への亡命を決意。もはや敵国となった母国を次々と撃破する軍才を示しますが、彼は晋に戻る運命にあったようです。策略によって士会を晋に連れ戻したのは、かつて彼に命を救われた郤缺でした。 

 

しかし一旦衰えた晋の勢いは戻りません。趙盾が擁立した霊公は乱行がたたって暗殺され、趙盾の後を継いで宰相となっていた荀林父は「邲の戦い」で楚軍に大敗。天意の行方を思い悩む士会でしたが、ついに彼が宰相に登用される日が訪れるのでした。彼は2年で引退しますが、春秋左氏伝は「晋の歴史上、士会こそが最高の宰相である」とまで絶賛しています。 

 

本書を読んだのは10数年前のことですが、これまで『十三史略』の一部としてしか知らなかった春秋戦国時代の面白さを知ることができました。その後に著者の『重耳』、『晏子』、『楽毅』、『子産』、『管仲』などを次々と読んだわけですが、どの作品も期待を裏切らない水準でした。当時はまだ読書ノートを残していなかったので、結構忘れてしまっていることが悔やまれます。 

 

2020/7再読