りぼんの読書ノート

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ロビン・フッドの愉快な冒険(ハワード・パイル)

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中世イングランドで活躍したというロビン・フッドの名前を知らない人はいないでしょう。シャーウッドの森を住みかとする義賊で、弓の名人であり、恋人はマリアン。後にはリチャード獅子心王に仕えたことなどは断片的には知っていましたが、物語自体を読んだことはありませんでした。ロビン・フッド伝説にはさまざまなバージョンがあるのですが、それらを取捨選択して筋の通った物語を矛盾なく語り上げた「決定版」が本書だそうです。 

 

本書では、ロビン・フッドが愉快な仲間たちと出会い、彼を宿敵として付け狙うノッティンガム長官を手玉に取り、町や村の人々に愛されながら森での生活を楽しむ様子が、生き生きと描かれます。後に彼の片腕となるリトル・ジョンとの対決をはじめとして、陽気で怪力のタック修道士、密猟者アーサー・ア・ブランド、一味で最年少の粉屋のせがれミッジ、ロビンの甥で洒落者のウィル・スカーレット、恋人をロビンに助けてもらった吟遊詩人のアラン・ア・デール、悪徳修道院長からの借金地獄から救ってもらった騎士リチャードらとの出会いは、どれも愉快な物語。 

 

面白いのは、ロビンは仲間たちとの対決で結構負けていること。リトル・ジョンとの橋の上での対決は「牛若丸vs弁慶」を思わせますが、負けたのはロビンでした。なんと1日の内に3度もぶちのめされたこともあるのです。それでもロビンに勝った者たちが皆、ロビンに従っていくのは、彼の持つリーダシップのなせる業なのでしょう。長官や修道院長らの悪役からも単に金品を強奪するのではなく、森の宴で一晩もてなしてから法外な対価を払ってもらうのですから、憎めません。ジョン王からは窮地に追い込まれれますが、エレノア王妃に助けられるのもイングランド英雄伝説の典型ですね。 

 

そしてやがて十字軍から帰還したリチャード獅子心王と出会います。伯爵として国王に仕えた時代の物語は全てカットされますが、ラストがグダグダの『水滸伝』と異なるのは、ロビンが最後にシャーウッドの森に戻ってくることでしょう。そして再び楽しい森の暮らしが始まったと思いたかったのですが・・。恋人マリアンについてはたった2度言及されるだけなのが残念ですが、やはり本書は「決定版」ですね。 

 

2020/2