りぼんの読書ノート

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デートクレンジング(柚木麻子)

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結婚して義母の喫茶店を手伝っている佐知子は35歳。彼女が妊活を急ぎ出したのは、喫茶店に掛けらるようになったハト時計が時を刻む音にせかされたからなのでしょうか。しかし彼女の親友でアイドルグループ「デートクレンジング」のマネージャーをしていた実花は、もっと時間を意識し始めたようです。10年間に渡って全てを捧げてきたグループが解散に追い込まれたのをきっかけに、婚活にのめりこんでしまったのです。 

 

そもそも実花が手がけたアイドルグループの方針は「デートの呪いをぶっつぶせ」。否定されるのはデート自体ではなく、デートの際に自分を偽って男性から気に入られるように振舞うこと。そんな考えを実践してきた実花は、婚活を始めて変わってしまったのでしょうか。初めて親友がさらけ出した脆さを見て、佐知子の気持ちも揺れ動きます。今まで彼女は、実花をアイドル視してきたようなものなのですから。 

 

「女の幸せは結婚」とか、「子供を産んで一人前」とか、「女の友情は結婚したら終わり」とかの旧態依然とした常識は、世間一般だけでなく、彼女たち自身の内部にもあるようです。そんな思い込みに翻弄される2人の姿はもどかしいのですが、もちろんこのまま終わる作品ではありません。実花が育て上げた「デートクレンジング」の元メンバーたちの想いが、2人を後押ししてくれるのです。 

 

作中歌「デートをぶっつぶせ」の歌詞がストレートでいいですね。「私が私のヒーローだもん。やりたいことはたくさんあるの。デートの呪いをぶっつぶせ!」。自らもアイドルオタクだという著者にしか書けない作品かもしれません。 

 

2020/1