りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ジョン・ランプリエールの辞書(ローレンス・ノーフォーク)

イメージ 1

ジョン・ランプリエールという人物も、彼が編纂した辞書も、実在するそうです。ほとんど歴史に埋もれてしまった地味な学者を主人公にした理由は、彼の『古典籍固有名詞辞典』が、ギリシャローマ神話に登場するきらびやかな人名やエピソードで、いっぱいだから・・なのでしょう。

彼の周りで不思議な殺人が頻発するところから、事件が始まります。狩の女神・ディアナの水浴姿をのぞき見してしまった罰を受けて猟犬にかみ殺されたアクタイオンの神話をなぞるように、殺された父。金の雨に変身して忍び込んだゼウスに犯されたダナエのように、熱せられて溶けた黄金をかけられて殺された娼婦。

やがてジョンは、祖先が、東インド会社の設立に関わっていたことや、フランスでユグノーが惨殺されたラ・ロシュル包囲戦を逃れたという一族の歴史にたどり着くのですが、彼を狙う勢力もまた蠢き始めます。

自分の身に危険が迫っているのに、ひたすら辞書を書き続けるだけで何も行動を起こさず、考えることは恋するジュリエットのことばかりという頭でっかちの主人公には、最後までイライラさせられてしまいます。しかもジュリエットもまた、ジョンを狙う一味の手先なのです。

ここまで膨らませてしまってどう収拾をつけられるんだろうかと、途中で心配になってしまったくらいの盛りだくさんな内容ですが、最後はしっかり纏まりました。でも、ほとんどサイボーグのような自動人形や、ロンドン地下に眠る、白骨化した巨大恐竜のエピソードは、どう考えてもいらないよなぁ。

この物語は、1788年7月14日に終わります。フランスの歴史的大事件のちょうど1年前の日です。それをはじめに言ってくれれば、時代背景がわかりやすかったのに・・。正直言って、とっても読みにくい本でした。

2006/8