りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

交渉人(五十嵐貴久)

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映画へのオマージュ作品を書き続ける、五十嵐さん。この本も、意外などんでん返しで楽しませていただきました。

3人組のコンビニ強盗が、50人の人質をとって病院に立て籠もる。犯人と退治するのは、警視庁きっての「交渉人」石田警視生。成り行きで大事件を犯してしまったらしいアマチュアの犯人たちを、正確な分析と、巧みな話術とで、思い通りに誘導していく。ところが、人質も段階的に解放させ、犯人逮捕も間近と思われた所で、事件は、意外な方向に向かっていってしまいます。これは、本当に行き当たりばったりの犯行だったのでしょうか。

かつて、石田のもとで訓練を受けたものの、女性の登用を快く思わない警察機構によって、左遷されていた麻衣子が、事件の真相に迫ります。実は、彼女自身、ある役割を果たすことが計算されていたのですが・・。

例によって、真相への伏線がしっかりと書き込まれています。その意味では、正統派のミステリーに仕上がっているのですが、この作品は、ラスト近くになって、展開が読めてしまったのが惜しい! 読者も、読みなれると、少々スレてきてしまうのです。

でも、その分、真相が提起する鮮明な問題意識と、真相を知った上で、毅然とした対応をする麻衣子の存在が光っています。五十嵐さんの作品の読後感が心地よいのは、トリックだけでなく、「人間としての誇り」を大切にする姿勢が感じられるからですね。

2006/7 ロンドン出張への機内にて