りぼんの読書ノート

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交渉人・籠城(五十嵐貴久)

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あれっ、「交渉人・遠野麻衣子」は前作で終了じゃなかったの?・・と思ったら、『交渉人 遠野麻衣子・最後の事件』は文庫化に際して『交渉人・爆弾魔』と改題され、シリーズとして続くことになったようです。

茶店の店主が客を監禁して篭城する事件が発生します。交渉人に任命された遠野麻衣子に犯人が突きつけたのは、警察としては絶対に認められない前代未聞の要求でした。幼い娘を少年に惨殺された過去を持つ篭城犯は、既に釈放された少年の実名と写真を公表し、テレビ中継の中で謝罪を求めるというものだったのです。

モデルとなった幼女殺害事件はピンと来ました。その少年犯罪者が現在どうしているのかは知りませんが、既に釈放されているということもあり得るのでしょう。少年法の問題と矛盾に踏み込んだ作品であり、事件の最後になって篭城犯の真意が明らかになる「意外な展開」となるのですが、正直言って前の2作品ほどは楽しめません。

どうも遠野麻衣子の対応が優等生すぎて、警察組織の枠内に留まっている印象なんです。犯人との交渉の中で閃く直感とか、上司を出し抜く咄嗟の対応のような場面が、ほとんどなかったのが原因のようです。読者が著者に期待しているのは「意外性」であって、「社会性」ではないと思うのですが・・。

2010/10