りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

チョコレートコスモス(恩田陸)

イメージ 1

「広場にいたはずの少女が一瞬消えた」・・というから得意の不思議ワールドかと思ったら、恩田版「ガラスの仮面」。天才少女の演技が、一瞬前の彼女を消えたように見せたのです。

伝説のプロデューサーが手がける新国立劇場の杮落とし作品のオーデションに召集された女性たちが、演技を競い合います。日本映画界を支えてきたベテラン女優に、ど根性アイドル。演劇界の名門に生まれ育った女優に、「姿を消す」無名の天才少女。

オーデションの内容が奮っています。3人の登場人物がいる台本を、どうやって2人で演じるか。独白シーンに、どうやってもう1人がかぶせていくか・・。この描写が素晴らしい。まるで、舞台を見ているような臨場感にあふれていて、読んでいて物語の中に引き込まれて行く感じを味わえます。

ストーリーもいいですね。実はもう一人。オーデションに招かれていない女優が主人公。彼女がどうやって先の4人にからんでいくのか・・。彼女は悩んでいるのです。「まだそっち側に行ってはいけない。二度と引き返せなくなる」と。演じる者だけが見ることのできる、恐るべき世界が現れる。

恩田さんの作品、ハズレもあるけど、これは大アタリですね。お奨めです。^^

2006/4