りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

レオナルドのユダ(服部まゆみ)

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天才を知ってしまった者が持つ憧憬と愛憎。光の部分は、天才の師に愛された絶世の美青年サライと、師を看取った貴族出身の愛弟子フランチェスカ。影の部分は、フランチェスカの従僕という身分でありながら、師に魅せられて弟子入りを熱望するジャン。

天才的な作品に衝撃を受けながらも、彼を認めようとしない人文学者パーオロが、弟子たちをたどって粗探しを始めます。作者がパーオロに追求させようとしたミステリーは3つ。美青年を愛したレオナルドは男色者だったのか? 最後まで登場しない「貴婦人の肖像画」のモデルは誰なのか? 師を裏切った「ユダ」的な人物は誰だったのか?

もちろん、「貴婦人の肖像画」とは「モナリザ」のこと。作者の想像力は、3つの問いに見事な回答を与えてくれます。そして、なぜ真実が隠されたのかも・・。

モナリザ』と『洗礼者ヨハネ』を見比べてしまいました。そして師を越えることなど考えもしなかった弟子であった、フランチェスカとジャンの作品を見てみたくなりました。歴史ミステリーも美術ミステリーも好きなのです。

2006/4