りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

坊ちゃん忍者幕末見聞録(奥泉光)

イメージ 1

漱石の「坊ちゃん」を何度も愛読したという著者が、「坊ちゃん」っぽい朴訥・不器用キャラを主人公にして、「坊ちゃん」っぽい文体で書いた、オマージュ小説です。

庄内藩で妙な忍術を仕込まれた松吉が、何故か医者を志し、攘夷にかぶれた幼馴染の寅太朗とともに、京へと旅立ちます。2人は京で、尊皇攘夷の志士たちや新撰組と出会い、歴史の渦中に巻き込まれてしまうのですが、彼らの周りで起こることはほとんどドタバタ喜劇。

確かに「坊ちゃん」を感じさせるものはあるのですが、それだけのこと。清水義範のような、思い切ったパステーシュにも成りきってないし、つまらない小説でしたよ。幕末の京都に現在の京都が交錯するあたりは、実験小説? ストーリー上の必然性はないし、かえって興がそがれます。

2005/10