りぼんの読書ノート

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憲法はまだか(ジェームズ三木)

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自民党圧勝で憲法改正も議論対象になりつつあるようですが、本書は、数年前に明らかにされた日本国憲法誕生の『秘話』ストーリー。

敗戦後、GHQの指示によって日本政府は明治憲法の改正に着手。ところが、政府系の検討機関が出した『改正案』はどれも保守的で失格。GHQの法律問題のアマチュアたちが1週間で作りあげたものが、今の憲法の草案になったというのは、歴史的事実のようです。

いわゆる「押し付け憲法論」には根拠があるわけですが、当時の国民は「明治憲法の手直し」案に大ブーイングをして、「主権在民戦争放棄基本的人権の尊重」を明快に示したGHQ案に喝采をおくったわけですから、あながち「押し付け」とも言えないのでしょう。

14条「法の下の平等」や、24条「男女の本質的平等」を書いたのは、なんと当時22歳の女性。ベアテ・シロタさん。長いこと隠されていたのですが、彼女が後に日本の国会で「自分の持ち物よりもいいものをプレゼントしたのだから押し付けではありません」と語った話は、まだ記憶に新しい。

長年の議論の的である「9条問題」は、冷戦のはじまりによって、最後の瞬間に自衛隊に道を開く修正がなされたとのこと。「9条問題」を別にしても、もちろん憲法は完全ではありません。「母性保護条項」はベアテさんの草稿からカットされてしまったし、26条「義務教育」では不用意に「子女」なんて言葉が登場するのですから。

それでもなお、日本の憲法は素晴らしいと思うのです。ただ、あの前文の文体は何とかして欲しいものですが・・。

2005/10

当時のベアテ・シロタさん
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