りぼんの読書ノート

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後巷説百物語(京極夏彦)

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「百物語シリーズ」は、「京極堂シリーズ」と裏表の関係のようです。「怪異はそれを信じたがる人の心にある」ということを、「どちら側から見るのか」という違いなのかもしれませんが。

小股潜りの又市や、山猫回しのお銀が仕組む、怪異現象。それは、真実をそのまま出したのでは立ち行かないことを、妖怪の仕業として収めてしまうための、仕掛けの手口。

このシリーズ、好きだったのですが、これで終了のようです。本書の時代は、先の2作から数十年たった、明治10年。年老いた主人公・山岡百介が、若い巡査たちを手助けするために、過去に仕組まれた事件を振り返って語ります。

中には、今でも生きている仕掛けもあったりするのです。いや、当事者が生きているうちは、仕掛けも生きている。そしてラストの2話で、百介と別れた後の又市やお銀の消息や、百介の世話をする若い美女・小夜の身元も明らかになって、ぐっと盛り上がります。

第一話が「百物語会」ではじまったシリーズですが、最後の締めくくりも「百物語会」で幕を閉じました。一晩のうちに百番目の怪異が語り終えられたときに、極楽を見る者と、地獄を見る者とが現れます。

人々が怪異を信じている時代だから、妖怪の仕業にできたのですが、もちろん近代以降の世界では通用しません。今の時代に人心を収攬する手立ては、正義? 公平? 希望? でも、仕掛けの本質には変わりないのかもしれませんね。

2005/9