りぼんの読書ノート

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沙門空海唐の国にて鬼と宴す3・4(夢枕獏)

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1・2巻と間が空きましたが3・4巻がようやく届きました。前回の読書ノートで「陰陽師から進歩してない」などと言いましたが、この作品、17年間書き続けていたものがようやく完成とのことで『陰陽師シリーズ』とは同時進行していたんですね。

4巻も書き連ねただけのことはあって内容は重厚です。「空海が異例の速さで密教を伝授された」という事実。「玄宗皇帝と楊貴妃の時代から、まだ50年」という事実。「阿倍仲麻呂玄宗皇帝に仕えていた」という事実。「空海の唐滞在期間に白楽天長恨歌を書いていた」という事実。こういったことから、編み上げたストーリーなんですね。

「50年」・・長いようで短い期間。まだ存命の者もいるだろうし、当時の夢も恨みも消え去ってはいない、微妙な長さ。むしろ存命者の命が消える直前にこそ、強い想いが発せられるものなのかもしれません。

仲麻呂と高力士の手紙によって解き明かされる当時の秘事や、廃墟と化した玄宗皇帝と楊貴妃ゆかりの華清宮で開かれる宴に半ば鬼と化した存命者たちが集うクライマックスは読み応えありました。全てに決着をつけるのは、もう1人、生き残っていた意外な人物。後書きで本人が「大傑作」と言ってるけど、うなずける所もあります。

2004/10