りぼんの読書ノート

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神の代理人(塩野七生)

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「神の代理人」とはカトリック世界を代表するローマ法王のこと。ルネサンス期を代表する4人の法王の事績や人格について論評した、著者初期の「歴史エッセイ」です。ローマ法王が世俗の権力である「法王国家の元首」だった時代には、さまざまな出来事が起こっていたようです。

「最後の十字軍(ピオ2世)」法王在位1458-1464年
ルネサンス初期に在位したピオ2世が目指したのは、なんと十字軍遠征でした。失敗に終わった第9回十字軍(1272年)、最後の十字軍国家であったアッコン陥落(1291年)から200年近くも経つているのに、こんな時代外れのことを言い出したのは、1453年のコンスタンティノープルの陥落があったから。もちろん目指すのはイスタンブールなのですが、もはやヨーロッパの王侯は誰も動こうとはしません。壮大な計画は法王の頭の中にしか存在しなかったのです。

「アレッサンドロ6世とサヴォナローラ(法王在位1492-1503年)
メディチ家の独裁と腐敗を批判して、フィレンツェ神権政治を敷いたサヴォナローラですが、フランス王を頼りにしてローマ教皇を批判したのはやりすぎだったようです。法王の巧みな誘導によって、サヴォナローラフィレンツェ市民によって火刑に処せられることになります。さすがボルジア家のチェーザレとルクレツィアの父親です。

「剣と十字架(ジュリオ2世)」(法王在位1503-1513年)
アレッサンドロ6世が行った法王直轄領を拡大するため、教皇軍の戦闘に立ち、各地の王侯を思いのままに動かそうとした法王の行為が、最後に招いたのはイタリアの弱体化でした。ヴェネティアを包囲したカンブレー同盟は、北イタリアをフランス領にしただけだったのです。さらにスペインやドイツを動かそうとするのですが、これは狼や虎を庭に引き入れるようなものですね。

「ローマ・十六世紀初頭(レオーネ10世)」(法王在位1513-1521年)
メディチ家出身の若い法王は、各国の勢力と和解してサン・ピエトロ大聖堂の建設を軌道に乗せ、ローマの一時的な繁栄を招いたのですが、これは過去や未来の資産を食いつぶしただけのようです。ドイツでは宗教改革が起こりつつあり、ハプスブルク家では1527年にローマ強奪を行うカール5世が戴冠しようとしていました。

2018/12再読