りぼんの読書ノート

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暴力の教義(ボストン・テラン)

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1910年、メキシコ革命前夜。武器を満載してメキシコへ向かうトラックを強奪した男、犯罪常習者のローボーンは逮捕され、免責特権の条件として合衆国捜査局のメキシコ情勢の内偵に同行するという取引を行います。同行するのは若い捜査官ルルドルルドはローボーンが18年前に捨てた息子だったのですが、悪党の父親はその事実に気付きません。

国境を越えた2人を待っていたのは革命前夜のメキシコの騒然と混沌でしたが、ルルドはその裏に蠢いている勢力があることに気付きます。それは石油利権を求めるアメリカの石油会社であり、内密にそれを支持するアメリカそのものだったのです。

「暴力の詩人」と言われるテランですが、その魅力は「極限の暴力が聖性を帯びてくる」かのように描かれる点にあるように思えます。本書では、悪党のローボーンがルルドの正体に気付いてからの行動がそれにあたりますね。一方で、ルルドが耳の聞こえない少女テレサによって憎しみを赦しに変えていく場面も宗教性を感じます。ルルドは、小悪党のテレサの父親を殺害しているのですが・・。

著者テランの正体は不明だとのこと。傑作の音もなく少女はが自伝的小説とも言われることから、女性作家ではないかとも言われているそうですが、どうなんでしょう。

2013/1