かつてIRAのテロリストであったフィーガンは、イングランドとの和平合意後はほとんど無用の人物と成り果ててしまい、酒に溺れる日々をおくっているのですが、実のところは、自ら手を下した12人の亡霊に苦しめられていたのです。
彼らの死を招いたテロ工作の指令を出した責任者たちの処刑を求める、亡霊たちの要求に屈して、フィーガンは以前の指導者や仲間たちを次々と殺害していきます。今は北アイルランド議会議員となっている幼馴染や、シン・フェイン党の指導者、さらにはイングランド警察からのスパイらが狙われていくのですが、そのことがベルファスト合意による和平への動きに微妙な影響を与えてしまうんですね。
それだけではありません。責任者が全員殺害された後も、亡霊たちは立ち去ってはくれないのです。亡霊たちが求める復讐の最後の一人は・・もちろん実行者のフィーガン自身です。果たしてフィーガンに慈悲は与えられるのでしょうか・・。
本書のテーマは「慈悲」ということなのでしょうが、かつてのテロ指導者が現在の和平支持者となっているという、北アイルランドの政治情勢の複雑さも理解できる作品となっています。
2012/7