りぼんの読書ノート

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チンギス紀 16(北方謙三)

ホラズム国との戦闘が終わろうとしています。大軍を率いた国王アラーウッディーンはカラ・クム砂漠で大敗を喫し、カスピ海の孤島で無念の死を迎えます。精強な傭兵軍を率いたトルケン太后も囚われて力を失いました。後継者となった皇子ジャラールッディーンはアフガニスタンの山岳でモンゴルを悩ませますが、もはや退却戦でしかありません。最後に集結させた30万の大軍もインダス河畔で壊滅し、その後は放浪の王朝となっていきます。チンギスひとりを執拗に狙ったジャムカの息子マルガーシの一太刀も吹毛剣に阻まれました。

 

インダス河畔の戦いは1221年のことであり、1225年にチンギスがモンゴル高原に帰還するまで数年ありますが、もはや目立った戦闘はありません。長い物語の最後が近づいています。

 

遠い潮州の海運業者トーリオは10年先を見通すべく、物流の道をたどって西への道を歩み始めました。彼はこれから沙州の侯春、アウラガのボオルチュ、カラコルムの耶律楚材、鎮海城のチンカイ、エミルのタビュアンらと会い、最後にはホラズム滞在中のチンギスと出会うのでしょう。かつてチンギスと草原の覇を競ったタルグダイとラシャーンの養子であるトーリオは、南方の小梁山の秦広とも交易を行っているのです。

 

数世代に渡る壮大な物語が生み出した人々の繋がりは、物流の道として根を張ったわけです。『水滸伝』の頃から物流に新たな国の形を求めていた著者は、当時からパクス・モンゴリアーナの時代を見据えていたのでしょうか。著者に聞いてみたいところです。

 

2024/3