りぼんの読書ノート

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子宝船 きたきた捕物帖2(宮部みゆき)

『本所深川ふしぎ草紙』や『ぼんくら』や『桜ほうさら』と地続きの世界である江戸深川を舞台として、文庫屋で岡っ引き修行中の北一と謎めいた凄腕の相棒である喜多次の「きたきた」コンビが活躍する大江戸ミステリの第2弾。喜多次の正体も、文庫の絵を描いてくれる武家の若の正体も、まだはっきりとはしていません。

 

「子宝船」

オリジナル文庫を飾る絵柄を「出産祝い」にしようと考えた北一は、貸本屋の村田治兵衛にたしなめられてしまいます。実の所、子宝に恵まれると評判だった宝船に乗る七福神の絵の描き手が面倒に巻き込まれていました。幼児が亡くなった商家の絵から、弁財天が消えていたというのです。こんな不思議な事件の真相は何だったのでしょう。争いの場を鎮めた政五郎親分は、引退したとはいえまだまだ貫禄十分です。

 

「おでこの中身」

夫婦仲の良い弁当屋が幼い子供とともに毒殺される事件が発生。その朝、肩に銀杏のおしろい彫りがある妖しい女を見た北一は、検視役の与力・栗山に協力して女を捜し始めますが、手がかりが足りません。北一は、町奉行所の文書係となっている博覧強記の「おでこ」に引き合わされるのですが・・。本書には登場しませんが、「ぼんくらシリーズ」でおでこと親友だった弓之助は、長崎で学者になっているようです。

 

「人魚の毒」

北一が配った女の人相書きは、遠く房総にまで広がっていたようです。女に見覚えがあると言って訪ねてきたのは、木更津湊の岡っ引き親分でした。彼と乳姉弟であった女は生まれながらの悪女であり、同じ手口で一家6人を殺めた過去があるとのこと。女の正体をつきとめた「きたきたコンビ」は、女を捕えに行くのですが・・。

 

ここで喜多次の正体の一旦が明かされます。どうやら彼は忍びの一族のようです。絵心ある武家の若様はなんと少女だったのでしたが、なぜ彼女が若と名乗っているのかはまだ明かされていません。このシリーズは、「杉村三郎シリーズ」や「三島屋変調百物語シリーズ」と並んで長く書き続けられていくのでしょう。

 

2024/2