りぼんの読書ノート

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あさきゆめみし6-7(大和和紀)

源氏物語』をほぼ忠実にコミック化したシリーズの7巻では、「第1部」が閉じられる第33帖「藤裏葉」までが描かれます。3人の子供たちがそれぞれ、帝、国母、人臣を極めるという古の予言は実現寸前となり、40歳になった光君自身は准太上天皇となって栄華を極めるに至ります。

 

先を急ぎすぎました。手の届かぬ初恋の人・藤壺を失った光君が、自らの青春時代の終わりを知ったのは32歳の時のこと。従妹にあたる前斎院の朝顔に誘いを拒まれて、光君の不敗神話は終了。この後は花散里、空蝉などかつて契った姫君たちの世話をしながら、息子・夕霧の恋の相談相手となったり、夕顔の遺児で内大臣(頭中将)を父に持つ玉鬘を後見して嫁ぎ先を探したり。「寅さん」がシリーズ後半で恋愛の現役からコーチ役に変わったことを思い出しました。

 

「玉鬘十帖」は、『源氏物語』の中でも異質な存在ですね。光君の弟にあたる蛍兵部卿や、彼女が異母妹であることを知らない柏木らから求婚され、光君にすら一時は邪心を抱かれた玉鬘が結ばれた相手は、髭黒大将なる意外な人物。強引に迫られて既成事実を作られてしまった結果ですが、玉鬘が幸福になれるのならば何の問題もありません。一方で、夕霧は頭中将の娘である雲居雁との結婚を許されます。長年ライバル関係にあった光君と頭中将の最期の対決は、引き分けで終わったということなのでしょう。

 

次巻の「若菜」からはいよいよ第2部が始まります。暗転する光君の運命を、著者はどのように描き出すのでしょう。

 

2023/6