りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

スターシップ1反乱(マイク・レズニック)

桜庭一樹さんが『少女を埋める』で言及していた『キリンヤガ』を読もうと思ったのですが、図書館蔵書に含まれていなかったので、同じ著者のSF小説を読んでみました。結果は期待外れ。『キリンヤガ』は不条理な環境で育つ少女の孤独な闘いを描いた作品なのでしょうが、本書は典型的な1970年代の通俗SF小説でした。キムボール・キニスンや西部劇の保安官のように、自分の価値観の正しさを信じて疑わないヒーローの物語だったのです。

 

宇宙に広がった地球人が多くの知的種族と友好関係を結び、銀河共和国を作り上げ、独裁的なテロニ連邦と宇宙戦争を繰り広げている時代。ひとりの男が辺境地域の老朽艦「セオドア・ルーズベルト」に着任します。その男ウィルソン・コール中佐は、過去に三度の勲章を授けられた有能な士官でありながら、ことなかれ主義の上官に反抗して独断専行にはしるために左遷されてしまったのです。

 

しかし彼はこんなことで挫けません。家族を失ってから無気力なフジヤマ船長のもとで、第2副長として最初の当直中に不審な動きを見せる敵国艦を発見し、ただちに行動を起こします。その結果、敵のたくらみを見抜いたものの、彼によってやる気を蘇らせたフジヤマ船長は戦死。次いで彼は老朽船を激しい戦闘に引きずり込むのですが、新たな船長は理不尽な命令を下すのです。既に乗組員の心を掴んでいたコール中佐は、船長に対する反乱を企てるのですが・・。

 

彼が何もしなければ、敵国に密通した共和国の大物政治家は見過ごされ、敵国は星ひとつ分のエネルギーを手にすることができたのでしょう。しかしその代償は、数百万人の犠牲者でした。彼が直接手を下したことではなく、彼はさらに数百万人単位の犠牲者の発生を防いだわけですが、これは「正義の味方」の行為なのでしょうか。パロディにしか思えなかったのですが・・。

 

2022/12