りぼんの読書ノート

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ナポレオン2.野望篇(佐藤賢一)

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フランスに勝利と平和をもたらした英雄としてパリに凱旋したナポレオンでしたが、権力を狙う危険人物とみなされて総裁政府からは厄介者扱いされてしまいます。彼を見込んで接近してきた策士タレイランの助言を得てナポレオンが次に取った行動は、唯一残った敵国イギリスの補給路を断つためにエジプト遠征軍を率いることでした。 

 

ピラミッドの戦いで前近代的なエジプト軍を破ってカイロ入場。多くの学者たちを率いて「エジプト学」という学問分野を起こすほどの文化的成功すら収めますが、海軍がイギリスに壊滅されたために帰還の手段を失ってしまいます。そんな中で欧州では第二次フランス大同盟が成立。先のイタリア遠征の成果も失うという国家存亡の危機に陥ったフランスを救うためにナポレオンが取った手段は、ほぼ単身での帰国でした。 

 

軍事力を国民的人気に後押しされて、ブリューメル18日のクー・デタでデゥコ、シェイエスとともに共和国執政に就任。翌月の新憲法発布とともに、強大な権力を集中させた第一執政に就任すると、第二次イタリア遠征に乗り出します。アルプスを超えてマレンゴの戦いに勝利してフランスの版図を大幅に確定させると、フランス皇帝への就任を阻害するものはもうありません。トラファルガー海戦に敗れてイギリス侵攻はあきらめざるを得なかったものの、アウステルリッツ三帝会戦に完勝して欧州での覇権を不動のものにするのです。 

 

まさに連戦連勝ですが、勝敗が紙一重の戦いもあったことまで詳しく説明されています。敵の意表を衝く布陣と進撃、大砲の前線への展開、騎兵の一斉突撃などの独自の作戦が功を奏したわけですが、国民軍の創出と意思決定の速さがもっとも大きな要因だったのでしょう。 

 

2020/5