りぼんの読書ノート

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くらし安心支援室は人材募集中(雪村花菜)

「紅霞後宮物語シリーズ」の著者が、これまでとは全く違う作品に挑みました。著者の言葉をそのまま用いると「架空の地方公共団体・北加伊道を舞台にした、専門性のあんまりないライトなゴーストバスター物語」。いきなり吸血鬼の血をひくマダムが登場したりして、ゲイル・キャリガーの「英国パラソル奇譚シリーズ」と似た雰囲気も感じられます。

 

主人公は進路に悩んでいる大学4年生の辻村みゆき。辻村深月さんをイメージしているのかもしれません。教授から突然紹介された就職先は、北加伊道の公務員で「すこし不思議」な事件を扱う「くらし安心支援室」。彼女の面接に現れたのは、いかつい中年男性の勝山室長と香坂と名乗る凄まじい美魔女。「口にしたら警戒されがちな分野に足を突っ込む業界」との説明に返事をためらったみゆきでしたが、自分でも気づかないうちに彼女にも怪異が迫っていたのです。謎めいた図書館司書の中森や、行方をくらます忘れ物の日記帳や、2年間眠り続ける親友の奈華には、どのような関係があったのでしょう。

 

実はみゆきも異能を有していたのです。「パラソル」のソフロニア嬢や、「文豪ストレイドッグス」の太宰と似たような能力・・などというと、種明かしになってしまうでしょうか。もちろん本書の趣旨からして、彼らの能力よりもかなりソフトで、彼女はほとんど普通の女子大生なんですけどね。

 

「紅霞後宮物語シリーズ」の瑞々しい人物描写や、軽妙な会話や、ブラックユーモアのセンスは、本書でも健在です。とにかく楽しい作品なので、シリーズ化されるのであれば読み続けようと思います。

 

2022/7