りぼんの読書ノート

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剣樹抄2(冲方丁)

徳川の治世が武断政治から文治政治へと切り替わろうとしている第4代将軍・家綱の時代。まだ20代の水戸光圀が父親から引き継いだのは、幕府転覆を目論む勢力に対する隠密組織「拾人衆」を率いるお勤めでした。そしてその諜者たちは、特異能力を身につけた捨て子たちだったのです。御三家を敵視する古参老中や、幕藩体制を脅かす謎の集団「極楽組」を相手にする戦いは、新たな段階へと進んでいきます。幕府に遺恨を抱く加藤清正公の遺臣や浪人たち、未来に夢を抱けない旗本の次男・三男たちを操っている者には、どのような狙いがあるのでしょう。またオランダを介した奴隷貿易は、一味の企みと関りがあるのでしょうか。

 

このシリーズは、光圀によって剣の腕を見込まれた孤児・了助の成長物語でもあります。旗本奴に父親を惨殺された了助は、剣しか頼むもののない「剣樹地獄」から抜け出すことができるのでしょうか。そして彼と光圀の間に秘められた因縁とはどのようなものなのでしょう。どうやら荒れ狂っていた時代の光圀もまた、罠に陥れられていたようなのです。本巻では新たに、父の死の真相を知った了助を導く重要な人物が登場します。柳生家の末息子であり、僧籍に収まり切れずにいる剣の達人・義仙を師と仰ぐことになった了助は、北へ逃れた「極楽組」を追って日光へと向かうのですが・・。

 

まだ血生臭さが残る江戸時代初期を舞台とする「マルドゥック」や「シュピーゲル」のようなシリーズです。了助にはバロットや涼月のような役割が期待されているわけですが、壮絶な物語を生み続けている著者のことですから、単に新たなプロットというだけで終わることはないでしょう。まだまだ続いていく物語のようです。続編も楽しみです。

 

2022/7