りぼんの読書ノート

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アカガミ(窪美澄)

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2030年、少子高齢化の進む日本では、それと並行して若者の無気力化の深刻な問題になっていました。若者の多くは恋愛も結婚もせず、まして子どもを持とうとはしていません。友人すら持たずに、ひとりで生きていくことを望むようになっていたのです。危機感を強めた国は、国営のお見合いシステム「アカガミ」を立ち上げ、結婚や出産の支援を始めていました。

 

病気がちの母親と暮らして介護施設に勤務している25歳のミツキは、自殺を試みた時に助けてくれた年長の女性ログから「アカガミ」に応募するよう勧められます。国家公務員の資格でセックスワーカーの仕事そしているログという女性も興味深いのですが、そちらは本書のメインテーマではなさそうです。「アカガミ」に合格して、パートナーとしてあてがわれたサツキという若い男性との同居生活を始めたミツキは、次第に恋愛やセックスを知り、ついに子供を授かるのですが・・。

 

戦前の日本軍への召集令状が「アカガミ」と呼ばれていました。本書の「アカガミ」にも恐ろしい意図が秘められていたようです。もっともこのような制度が作られてしまうこと自体が、若者が無気力化したせいなのでしょう。著者は「人生史上、心身共に1.2を争うくらいダメダメモードの時に」本書を書いたとのこと。憂鬱な未来を回避するためには、体力気力ともに充実させる必要がありそうです。

 

2022/3