りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

アメリカ残酷物語(ジャック・ロンドン)

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著者が短編の名手でもあったことは、『火を熾す』で知りました。本書は、『荒野の呼び声』や『白い牙』など野性味豊かな作品で知られる著者らしく、人間の中に潜む欲望や残虐性を暴いた作品をを集めた短編集です。オチが効いている作品が多いのは意外でした。

 

「まんまる顔」

初めて会った時から虫が好かないまんまる顔の男を殺害しようと思い詰めた男は、彼に猟犬をプレゼントします。男の趣味を逆手に取った特別の訓練を施した猟犬を。これは完全犯罪ですね、犬には気の毒ですが。

 

「影と光」

互いによく似たライバル同士の2人は、ともに科学者となって透明人間になる研究をはじめます。ひとりはあらゆる色を吸収する黒色の、もうひとりはあらゆる光を透過させる透明な物質を探し求めるのですが・・。

 

「豹使いの男の話」

サーカスの猛獣使いどうしの喧嘩は危なそうです。大きく開いたライオンの口の中に頭を入れる芸を見せるライオン使いを恨んだ男は、どのような手段を用いて復讐を果たしたのでしょう。

 

「ただの肉」

大きな盗みを成功させた2人の盗賊が次に考えることは、獲物をひとりじめにすること。しかし2人とも似たような手段を考えたようで、夕食の場が修羅場に変わってしまいます。

 

「恥さらし」

アラスカの原住民に捉えられて、拷問の末の死が確実な運命に陥った男は、酋長に取引を持ち掛けます。皮膚を刃物を通さないほど固くする薬を渡すというのですが、どうやってその薬の有効性を確認すればよいのでしょう。すべてが終わった後、酋長は自分が恥さらしになったことを知るのです。

 

支那人

農園で働く中国人が仲間に殺害された事件で、判事は無実の男を犯人とする判決を下し、看守は違う男を引き立ててくるのですが、フランス人たちにとっては誰が誰であろうと違いはないようです。

 

「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」

スペイン人航海者と何度も戦ってきた好戦的な島民たちは、なぜたったひとりの貧相な白人男に従属しているのでしょう。その男は島民たちから悪魔と信じられていたのですが、それは何故なのでしょう。

 

2021/3