りぼんの読書ノート

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チョコリエッタ(大島真寿美)

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高校2年生の知世子は、愛犬のジュリエッタの死によってからっぽになってしまいました。ジュリアッタは、彼女が幼い頃に事故死した母が名付けて、知世子に遺してくれた犬だったのです。だから愛犬の死は、2度めの母の死であり、彼女は深い喪失感に沈んでしまったのです。

 

進路調査に「犬になりたい」と書き、「死にたい」の気持ちが募るなかで、彼女は自分のことを「チョコリエッタ」と呼ぶのです。そんな彼女は、どのようにして心を解き放ち、快復へと向かうことができるのでしょうか。

 

これはある映画をめぐる物語でもあるのです。それはフェリーニの「道」。ジュリアッタ・マシーニ演じるジェルソミーナの悲しい運命が、知世子の世界と二重写しになっていきます。そもそも彼女の愛犬は、つぶらな瞳が似ていることから、このイタリア女優にちなんで名付けられたものだったのです。フィルムの登場人物に感情移入することと、自分が映ったフィルムが自分を客観的に見せてくれることは、実は同じなのかもしれませんね。

 

2021/1