りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

The MANZAI 1(あさのあつこ)

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中学2年の秋に転校生の瀬田歩は、サッカー部の次期キャプテンと噂される秋本貴史から、いきなり「おつきあい」を申し込まれます。これはイジメの隠語なのか。まさかBLの申し込みなのか。動揺する瀬田に秋元は「漫才のコンビになってくれ」というのです。 

 

以前の学校では特に理由もなく不登校となってしまい、父からも教師からも「普通じゃない」と言われたことがトラウマとなっている瀬田は、新しい学校では意識して普通であろうとしていました。それは彼から伸びやかさや覇気を奪っていたのですが、秋山からの申し出を断り切れなかったことで何かが変わっていきます。そして文化祭で「漫才ロミオとジュリエット」を演じることになってしまったのですが・・。 

 

『バッテリー』でも感じたことですが、著者の描く「少年」は現実と理想の中間にいる存在のようです。でもそうであることが逆にリアルさを感じさせてくれるのでしょう。巻末の対談で「ついに少年を捉えられなかった」と述べ、対談相手の重松清氏からは「若い叔母さんの視点」という斜め上加減を激賞されていますが、同感です。 

 

続編もあるようです。「発光美少女」の萩本恵菜、文学少女の森口京美、秀才の高原有一、ピアノが得意な篠原友美、サッカー部の蓮田伸彦という「チーム・ロミジュリ」メンバーを含めた少年少女たちは、どのような道を歩んでいくのでしょう。 

 

2020/6