りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ミスティック・リバー(デニス・ルヘイン)

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山の手育ちのショーンと、スラム街育ちのジミーとデイブ。遊び友達だけど、互いに住む世界が違うことはわかっている。そんな3人の関係は、11才の時に突然終わりを告げます。デイブが男たちに連れ去られ、4日後に自力で脱出したものの、人々は彼をさげすみ、避けるようになってしまったのです。連れ去られるデイブをただ見過ごした2人も心に傷を負います。

25年後、3人の人生が再び交差します。ジミーの愛娘ケイティが惨殺され、刑事となったショーンが担当。そして、その晩血まみれになって帰宅したデイブは容疑者に・・。

読むのが辛いストーリーでした。格差社会であるアメリカで、底辺から浮かび上がれない者たちが、少年時代の心の傷を引きずった時、悲劇は二重性を帯びてきます。犯罪者になるか、犯罪被害者になるかの、悲しい二者択一。唯一の救いは、ジムの後妻・アナベスの強さだったでしょうか。それもまた、家族と信じる者たちを守るために、犯罪すら厭わない類の「強さ」でしかないのですが・・。

著者は「ミステリーとは、登場人物が自分自身を発見する物語」と語っています。犯罪という極限状況で「発見」されるものも、確かにあるのでしょうけれど・・。

2007/1