りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

熱砂の絆(グレン・ミード)

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残念ながら、『雪の狼』ほどの衝撃はありませんでした。1953年のソ連スターリン暗殺に向かう孤高の暗殺者と、1943年のカイロでルーズベルトを暗殺しようと試みるドイツスパイとの、魅力の差でしょうか。それとも、共産主義から脱出しようとする薄幸の美女アンナと、正体不明の女性ラーエルの、ヒロインの魅力の差でしょうか。

ともあれ本書です。戦前のカイロで遺跡の発掘に携わり、友情と愛をはぐくんでいた3人の男女が、開戦により別離を強いられますが、数年後、3人の人生は皮肉な形で再び交差することになります。1人は敗色濃いドイツが起死回生の策として連合軍の離反を促すべく、カイロ会談に向かうルーズベルトの暗殺者として。1人は暗殺を阻止する側の、カイロ駐在の米軍情報将校として。もう1人、ユダヤ人の血を引きドイツで収容されていたはずの、2人の男性から同時に愛されていた女性ラーエルが、なぜか暗殺者に同行しているのですが・・。

もちろんカイロ会談は無事に行われ、連合国のドイツ侵攻は足並みを揃えて行われた訳ですから、本書の読ませどころは暗殺者がどこまで肉薄したのか、なぜ失敗したのか、そして3人のその後の運命はどうなったのか、に尽きるわけです。

その点ではある程度成功していると思うのですが、読者は『雪の狼』と比べちゃいますからね。辛いところです。

2007/1