りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ダーク(桐野夏生)

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作者の分身かと思っていた「村野ミロ」をここまで壊すのか。自分の分身だからこそ、めちゃくちゃにしちゃうのか・・。

「40歳になったら死のうと思っている」と始まる本書では、ほとんどの登場人物が身勝手さをむき出しにしながら、「砂糖菓子のように崩れて」いきます。ミロもまた例外ではありません。愛しながらも自らの手で罪に服させた男の獄中死を知って、やり場のない怒りに突き動かされてしまいます。

愛憎半ばする義父を見殺しにして、義父の愛人であった盲女・久恵や、かつての友人にも追われることになり、別人のパスポートを手に入れて韓国へと渡ります。身勝手な行動で関わる全ての人間を災厄に巻き込むミロは、韓国でもまた、愛した男を不幸に落としたかと思うと、犯罪、殺人、強姦による妊娠・・と、とことん堕ちていく。

ミロのシリーズには、まだ続きがありそうです。彼女は、ここから這い上がることができるのでしょうか。それとも、作者が他のクライム・ノヴェルで描いた女たちのようにどん底に落ちたまま、終章を迎えるのでしょうか。読後感はめちゃくちゃ悪いけど、続きを読まずにはいられません。もし続編があれば・・ですが。

2007/1