りぼんの読書ノート

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ミッテランの帽子(アントワーヌ・ローラン)

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フランス人にとってミッテラン大統領とは、どのような評価が下される人物なのでしょう。個々の政策はともかくも、オルセーの開館、ルーブルのピラミッド設置、新凱旋門建設などのパリ大改造が行われ、EU統合が進展した1980年代は、フランスが輝いていた時代であることは間違いなさそうです。

本書は、ミッテランシラクに敗れた1986年から、再選を果たす1988年までの2年間の物語。ミッテランの敗因は、ブラッスリーに帽子を置き忘れたことにあったのですね。そして同じ帽子を取り戻したことで政治的な復活も果たすのです。

その2年間ミッテランの帽子は、うだつのあがらない会計士にはじまり、不倫を断ち切れない女性モデル、スランプ中の天才調香師、没落を待つだけのブルジョワ資産家へと、持ち主を転々と変えていました。そして帽子を手に入れることによって、彼らの運命はそれぞれ好転していくのでした。

最後に帽子がミッテランのもとに戻る際のエピソードを含めて、いかにもフランスらしいお洒落な物語でした。「頭の上に帽子を乗せることで、人はそれを持たない人たちに疑う余地のない威厳を誇示できる」そうです。

2019/6