りぼんの読書ノート

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ルイ・ボナパルトのブリュメール一八日(カール・マルクス)

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レ・ミゼラブルの続編であるコゼットを読んで、彼女と夫マリウスが抵抗したナポレオン三世のクーデター過程を復習しようと思い、学生時代に読んだ本書を再読してみました。

1851年12月2日のクーデター直後の1852年の1月から3月にかけて執筆された本書は、1848年の2月革命に始まるフランス第二共和制の崩壊過程を、同時代の視点から評した力作であり、盟友エンゲルスからは「史的唯物論の適用の優れた実例」として評されています。一般的には冒頭の「歴史は繰り返す。1度目は悲劇として、2度目は喜劇として」という警句が有名ですね。タイトルの「ブリュメール一八日」とは、初代ナポレオンがクーデターを起こした日付のこと。

ルイ・フィリップ立憲君主制を打倒した第二共和制の理想は高かったのです。生存権・労働権・団結権などの市民的権利を承認し、言論と出版の自由を保障し、成人男子の普通選挙権を導入し、失業者対策として国立作業場を設置したりもしたのです。しかしながら、急速に保守化を進めたブルジョワや農民層に対して社会主義者やプロレタリア層の対立が鮮明となり、早くも6月にはパリ民衆が蜂起。これを武力で鎮圧した政府も支持基盤を安定させることができず、全国民がそれぞれの立場で強力な指導者を求めていたのです。

そんな中で「名前以外は何も持たない男」が、国民の愛国心を刺激して圧倒的な支持を集めていきます。ルイ・ナポレオンの政治手法は場当たり的に各階層に利益誘導を図るものでしかないお粗末なものだったのに、彼がなぜ独裁権を手に入れることができたのか。マルクスは「ボナパルティズム」という言葉を生み出し、「ブルジョワとプロレタリアの勢力均衡の間を衝いて、中間層を基盤に持つ権力が独裁化する一時的な現象」と定義しています。

しかし非民主的な独裁制は「2度目の喜劇」どころか、現在に至るまで何度も繰り返し発生し、悲劇をもたらし続けていることは周知のとおりです。マルクスが生きていたら、ヒトラースターリンの権力奪取をどう論述したのか、さらには現代世界のどこに危険が迫っているのか、聞いてみたいものです。

2018/11再読