りぼんの読書ノート

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テンプル騎士団(佐藤賢一)

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日本文壇における西欧歴史小説の第一人者が、テンプル騎士団の成立過程から悲劇的結末までを描き出しました。「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」や『フーコーの振り子』や『ダ・ヴィンチ・コード』に登場したり、「ジェダイの騎士」のモデルと言われたり、フリーメイソンとの関係を噂されたりする、怪しげな秘密結社として扱われることの多いテンプル騎士団とは、実際はどのような組織だったのでしょう。

もともとは、十字軍が奪還したエルサレム巡礼者を保護するために設立された騎士修道会でした。しかし教皇による特権授与、西欧の王侯貴族による寄進が繰り返された結果、軍事力、政治力、経済力を持ち合わせた超国家組織へと変貌していくのです。やがて十字軍国家の終焉によって中東での拠点を失った後も、特権と財産を有して組織は安泰かと思われたのですが、突然の破滅に襲われます。

それはフランス王フィリップ4世による一斉検挙であり、フランス人教皇クレメンス5世による異端審問の開始でした。結局のところ、力を持ちすぎた故の反動に対する備えが甘かったのかもしれません。フランス外で弾圧を免れた個人や団体もいたものの、騎士団は14世紀に壊滅してしまいます。そのあまりにも悲劇的な終焉が数々の伝説を生んだようです。

本書は歴史的事実に基づく新書なのですが、著者特有の語り口で綴られており、まるで小説であるかのように読める作品に仕上がっています。

2019/6