谷川俊太郎氏から「ぼくが一生かかっても書けない、かわいくて怖い童話」と評された作品です。
自分のハリが大嫌いで他の動物たちとうまくつきあえないハリネズミが、誰かを家に招待しようと思い立って手紙を書きはじめるのですが、不安に襲われて手紙を送る勇気が出ません。もし食いしん坊のクマがきたら? 自分勝手なビーバーが来たら? 警戒心が強いミーアキャットが来たら? 趣味が合わないクジラが来たら? 怒りん坊のカタツムリが来たら?
さまざまな動物たちの恐ろしい訪問が、孤独なハリネズミの頭のなかで繰り広げられる様子は、時に笑わせられ、時に身につまされます。読者もやがて、ハリネズミと同様に「でも、だれも来なくてもだいじょうぶです」と言いたくなるかもしれません。でも最後にハリネズミは、自分にぴったりの相手から訪問を受けることになるのです。
編集者は「ハリネズミはトーン自身」と語っているとのこと。「動物たちはみな同じ大きさ。同じ種類の動物は登場させない。人間は出てこない。物語の中では誰も死なない」という規則を設けて、物語を紡ぎ続ける著者の洞察力の深さが感じられます。
2017/10