りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

太陽の坐る場所(辻村深月)

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高校卒業から10年。20代後半になった同級生たちは、人気女優となったもののクラス会に現れないキョウコのことが気にかかっています。しかしキョウコに連絡をとろうとした同級生たちは、次々に音信不通になっていくのです。その背景には、高校時代に起きたある事件があったようなのですが・・。

マチュア劇団に所属している半田聡美。映画配給会社に勤めている里美紗江子。アパレルデザイナーとなった水上由希。地方局のアナウンサーになった本間響子。高校時代にハンサムな同級生とつきあっていた松島貴恵。転校してしまった浅井倫子。目立たない存在であった鈴原今日子。

2人の「キョウコ」、2人の「サトミ」、リンちゃん、みっちゃん。高校時代の呼び名が計算された伏線になっています。女優になったキョウコとは誰のことなのか、「事件」の当事者は誰だったのか、最後まで読者に悟らせない構成が見事なのです。

キョウコとコンタクトして元同級生たちとの連絡を絶った者たちは、事件に巻き込まれたわけでも、失踪したわけでもありません。高校時代に起きた事件から、ようやく「卒業」できたということなのでしょう。当時のヒエラルヒーや、その後の生き方に対してコンプレックスや嫉妬などを引きずる必要はなく、皆それぞれに自分が主人公である物語を生きているのですから。

2017/10