りぼんの読書ノート

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風を繍う(あさのあつこ)

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町人文化が最盛期を迎えた文化文政期の江戸が舞台。「剣才ある町娘と刺繍職人を志す若侍」というと、読み間違いかと思ってしまいますが、そうではありません。深川の繍箔屋丸仙の一人娘おちえは、お裁縫は苦手なものの「榊道場の白龍」と渾名されるほどの剣客なのです。

物語は、二千石の大旗本の若様・吉澤一居が丸仙に弟子入りを志願する場面から始まります。おちえの父で刺繍の名人と謳われる仙助は、当然断るのですが、一居には事情がありました。武士を捨てた一居の弟子入りは認められるのですが、2人は相前後して起こった娘斬殺事件に巻き込まれていきます。

ミステリとしての深みはありませんが、著者が描きたかったのはもっとも輝いていた時代の着物なのかもしれません。各章のタイトルにもなっている刺繍の柄行には、冒頭の「流水草花模様」から終章の「風雪飛鳥模様」まで、登場人物たちの気持ちが現れているようです。

2017/3