りぼんの読書ノート

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はなとゆめ(冲方丁)

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平安朝。絶対的権力者となるには天皇外戚となることが必須条件であった時代。天皇の寵愛を勝ち得て世継ぎを生むために、后たちがサロンの充実を競った時代。平安文化の水準を高めた競争の最高峰に位置していたのが中宮定子のサロンでした。

14歳で3歳年下の一条天皇に入内し、25歳という若さで亡くなるまでの11年間、定子にとって天皇の愛を勝ち得ることは、人生の全てを賭けた闘いだったのです。その前半は父親・道隆を盛り立てるために。道隆死後の後半は、露骨に権力を狙う叔父道長から、兄・伊周や弟・隆家を守るために・・。

そんな定子が見出して才能を開花させたのが、10歳近く年上の清少納言。「バツイチ子持ちのネガティブ女」だけど「上手なコメントだけは得意」な年増女をエースに抜擢して、一躍スターの座に押し上げたというのです。

定子が亡くなって宮仕えを辞めた清少納言の回想という形式で綴られる本書は、『枕草紙』の誕生記でもあります。本流の男性文学である『史記=「敷」』に対する「枕」。それこそが、定子という優れた女性の存在を後世に伝えようとする試みであり、定子が命をかけて育んだ宮中の「はなとゆめ」を見ることができた幸せを形に残そうとした清少納言の戦いであったとしているんですね。それが、たとえ「ひとときの華」であっても・・。

そして、本書の試みもまた成功しているように思えます。道長や、彼にへつらう男たちに対する「女たちのバトル感」がひしひしと伝わってきます。定子や清少納言の「仮想敵」は、まだ幼少だった中宮彰子や紫式部ではなかったのです。

2014/4