りぼんの読書ノート

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死神の浮力(伊坂幸太郎)

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死神の精度の主人公であった死神・千葉が帰ってきました。対象人物を7日間観察して「可」か「見送り」かを判定するのが死神の役割。

今回のターゲットは作家の山野辺遼。彼の幼い娘を殺害した本城という男に対して、法によらない復讐を計画しているのですが、本城のほうが一枚上手のようなのです。山野辺を嘲笑うような行為を繰り返す本城に対して、復讐劇は成就するのでしょうか。そして死神の判定はどうなるのでしょうか。

著者によると、サイコパスと呼ばれる良心のない人間は、25人に1人の割合で存在するそうです。しかし、1人のサイコパスは他の人々を分断して操り、思い通りに物事を運ばせることができるとのこと。では、24人の普通人は協力しあうことはできないのでしょうか。伊坂さんの得意とするテーマです。

復讐の成否とは関わりなく、死神の判定基準はどこか不明瞭で、恣意的とすら思われます。要するに、死とは理不尽なものなのでしょう。生きている人間にできることは、「死ぬに値する人生を生きているのか」に尽きるようです。

これまた重いテーマなのですが、何年たっても人間の常識を理解できない死神のユーモラスな言動に救われます。それもまた、人間に対する批評になっているんですけどね。

2014/2