りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

月と太陽(瀬名秀明)

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「身体と意識」の問題をとりあげた5編の作品を収録した短編集です。著者が得意としていた「ロボット関連小説」から派生したテーマですね。2011年から2013年に執筆されており、どの作品にも「震災」というキーワードが登場します。

「ホリデイズ」
フライトスクールでパイロット免許を取得した小説家が、飛行教官とともに1年ぶりに飛んだコースは、ある記憶をめぐる旅でした。2人は、サン・アンドレアス断層に沿って飛んだのです。

「真夜中の通過(ミッドナイト・パス)」
仙台の大学が地元企業と組んで、わずか1億円の予算で打ち上げた人工衛星は、打ち上げ直後に制御不能となってしまっていました。再び制御可能となった衛星に、彼らはある夢を託すのですが・・。

「未来からの声」
脳から脳へ言葉を送る「フラッシュ」が世の中に浸透した近未来。13年後の自分から届いたメッセージは、何を伝えようとしていたのでしょう。またそれは、一種の「タイムマシン装置」の完成を意味しているのでしょうか。

「絆」
女優の遥香が、2013年に皆既日食があったアフリカで出産したのは、臀部を共有する結合双生児でした。18年周期で120度ずつ移動する皆既日食帯の観測地点に招かれ、結合双生児たちの人生を見届ける役割を負わされた作家と舞台女優もまた、兄や姉を亡くした双子だったのです。そして54年後、束縛感と喪失感が交差する双生児たちの夢が、世界の人々が「絆」を実感するという形で実現します。深すぎて、理解が追いつきません。

「瞬きよりも速く」
養護施設で育った女性を長年支えてきた篤志家は、実はサイコパスなのでしょうか。人々を見守るナノロボットに必要なのは「サイコパス的な志向」だそうです。未来は、「こころ」までもが見えてしまう時代になってしまうのでしょうか。

2015/1